間違いやすい「うま味」と「旨味」
「うまみ」には、「うま味」と「旨味」のすなわち、ひらがなと漢字の2つの表現がありますが、実はこの2つはそれぞれ意味の異なる用語です。しかし、一般では、どちらも漢字とひらがなの違いにしか認識されていないことがほとんどであり、よく混同されて使用されている様子も散見されます。そこで、正しく「うま味」と「旨味」の違いをご理解いただき、会社パンフレットやホームページなどにおきまして、氷温熟成食品などのおいしさを適切に表現していただくため、少し解説いたします。
日本語としての「うまみ」は食品のおいしさを指す言葉として定着しています。そもそも、「うま味」という技術用語は、1907年、池田菊苗(東京帝国大学(現東京大学))が昆布の味には「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」以外の味があることに気づき、いわゆるグルタミン酸の呈する味として命名したものです。
しかし、その一方で食品の官能検査では、グルタミン酸の「うま味」以外にもおいしさを評価する用語としての「うまみ」という表現は必須です。例えば、貝のおいしさの要因であるコハク酸は「貝のうまみ成分」として一般的に知られています。また、遊離アミノ酸全般の量を「うまみ」の指標として用いることもあります。これらの混同しやすい表現を分離する方法として、学術的には、グルタミン酸、イノシン酸(カツオ節のうま味成分)およびグアニル酸(干しシイタケのうま味成分)の呈する味を「うま味」とし、それ以外のおいしさの表現は全て「旨味」と標記することが科学常識となっておりますので、くれぐれもご注意ください。
味を構成する要素は大きく基本味とそれ以外の味に分けられます。基本味は味蕾を介して受容され、神経における応答もそれぞれ分離することができるといった特徴を持ち、甘味、苦味、酸味、塩味が相当します。そして、この定義に該当しない味は基本味以外の味として取り扱われます。代表的なものとしては、辛味、渋味、えぐ味があげられます。そこで、うま味はどちらに分類されるかということで、生理学・生化学的研究や官能検査等の研究が行われました。これらの研究成果を総合した結果、1985年に「うま味」は基本味として位置づけられ、”umami”という国際的な学術用語として認められるようになりました。現在では対応する受容体も同定されており、すっかり国際的に定着しています。繰り返しになりますが、これらの過程で行われた研究は、すべてグルタミン酸、あるいはグルタミン酸とイノシン酸あるいはグアニル酸の混合によって得られる味応答に関するものであり、つまり、”umami”はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸による「うま味」であり「旨味」ではないのです。
引用・参考文献
1)栗原良枝ら(1996)「味の秘密をさぐる」(日本化学会 監修)、丸善、東京.
2)山口静子ら(1999)「うま味の文化・UMAMIの科学」、丸善、東京.
3)日下部裕子(2013)、うま味(Umami)、日本食品科学工学会誌60(8):76.
日本語としての「うまみ」は食品のおいしさを指す言葉として定着しています。そもそも、「うま味」という技術用語は、1907年、池田菊苗(東京帝国大学(現東京大学))が昆布の味には「甘味」、「塩味」、「苦味」、「酸味」以外の味があることに気づき、いわゆるグルタミン酸の呈する味として命名したものです。
しかし、その一方で食品の官能検査では、グルタミン酸の「うま味」以外にもおいしさを評価する用語としての「うまみ」という表現は必須です。例えば、貝のおいしさの要因であるコハク酸は「貝のうまみ成分」として一般的に知られています。また、遊離アミノ酸全般の量を「うまみ」の指標として用いることもあります。これらの混同しやすい表現を分離する方法として、学術的には、グルタミン酸、イノシン酸(カツオ節のうま味成分)およびグアニル酸(干しシイタケのうま味成分)の呈する味を「うま味」とし、それ以外のおいしさの表現は全て「旨味」と標記することが科学常識となっておりますので、くれぐれもご注意ください。
味を構成する要素は大きく基本味とそれ以外の味に分けられます。基本味は味蕾を介して受容され、神経における応答もそれぞれ分離することができるといった特徴を持ち、甘味、苦味、酸味、塩味が相当します。そして、この定義に該当しない味は基本味以外の味として取り扱われます。代表的なものとしては、辛味、渋味、えぐ味があげられます。そこで、うま味はどちらに分類されるかということで、生理学・生化学的研究や官能検査等の研究が行われました。これらの研究成果を総合した結果、1985年に「うま味」は基本味として位置づけられ、”umami”という国際的な学術用語として認められるようになりました。現在では対応する受容体も同定されており、すっかり国際的に定着しています。繰り返しになりますが、これらの過程で行われた研究は、すべてグルタミン酸、あるいはグルタミン酸とイノシン酸あるいはグアニル酸の混合によって得られる味応答に関するものであり、つまり、”umami”はグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸による「うま味」であり「旨味」ではないのです。
引用・参考文献
1)栗原良枝ら(1996)「味の秘密をさぐる」(日本化学会 監修)、丸善、東京.
2)山口静子ら(1999)「うま味の文化・UMAMIの科学」、丸善、東京.
3)日下部裕子(2013)、うま味(Umami)、日本食品科学工学会誌60(8):76.